neutron Gallery - 三尾 あすか ・ 三尾 あづち 展 - 
2007/8/7Tue - 19Sun gallery neutron kyoto
ニュートロンアーティスト登録作家 三尾 あすか (平面)
ニュートロンアーティスト登録作家 三尾 あづち (イラストレ−ション)

あすかとあづちは、双子の姉妹です。 あすかは大きい画面いっぱいに浮遊感溢れる絵を描き、 あづちはお伽話のようなキャラクターがひしめき合う賑やかな絵を描きます。 全く異質なようで、やはりどこか通じる二人の絵。






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gallery neutron 代表 石橋圭吾

 三尾あすかと三尾あづちは、双児の姉妹である。いわゆる「きょうだい」ユニットというのはアートに限らず見かけるが、この姉妹は双児だからと言って一緒に制作活動をしている訳ではなく、個々の制作と発表がまだ駆け出しな為、今回は私の発案で二人展形式を取ることにしただけである。
  あすかは洋画を専攻し、大きなキャンバス作品から布を使った制作まで手掛け、宇宙的な広がりを感じさせる景色を現出させる。一方、あづちは日々大量に生み出されるドローイングと、それらのイメージを定着させる平面作品どちらにおいても様々なキャラクターが登場し、ユーモラスで賑やかな作風である。お互いを意識はしつつも制作においては全く異なる作風なのは興味深いが、一方で見出せる共通点も少なくない。双児という同じの遺伝子を持ち合わせたからなのか、あるいは単に同時代に生きる同じ女性アーティストだからなのか、彼女達の作品を生み出す過程はかなり似ているのである。
  まず、同じモチーフが繰り返し登場すること。あすかは星のように見える浮遊物が大小様々に現れ、かといってそれは「星」を限定的に表すのでは無く、見方によっては鳥や戦闘機にさえ見える。事実、あすかの作品を見た或る老人は「戦争の頃を思い出す」とまで言ったそうだ。このモチーフは言うまでも無くあすかの想像の産物でありながら、自身の感情やメッセージを内包した存在である。一方、あづちの作品に登場するモチーフは多いが、トランプ、動物、食べ物、車や女性などが頻繁に現れる。まるで不思議の国のアリスかディズニーランドにでも迷い込んだかのような喧噪だが、登場人物達は皆あづちの大好きなものたちであり、やはり感情やメッセージを背負ってあちこちに登場しているのである。
  次に技法で言うと、二人とも重層的な作風であることに気付く。多様な画材をふんだんに用いての画面作りはコラージュ、重ね塗り、あるいは一度描いたものを消す行為にも至る。背景を設定しその前にモチーフを配置する。そして魔法の杖を振って現れる様なキラキラをちりばめる。かたや抽象、かたや具象と見られがちではあるが、出来上がった画面こそがまさに共通のアイデンティティーを如実に示しているのは間違い無い。
  最後にもう一つ挙げるなら、とりどりの色彩である。二人とも原色を大胆に取り入れることを怖がらず、かなり色の影響力を駆使するのであるが、画面において鑑賞者はその色にあまり縛り付けられない。色彩にこだわり、色の持つ力を引き出そうとするのは女性に多く見られる傾向であるが、二人はおそらく自分の好きな色を純粋に選んでいるのであろう、違和感や必要以上の情報は(色彩に)含まれていないように見える。むしろその奔放さは気持ちよく感じられ、向き合う私たちの心も開放されるようにさえ思える。
  二人とも絵を描く行為を「無意識」という単語を用いて説明するが、そこはまだ制作の言語化が進まぬうちの愛嬌と見ておきたい。例え無意識の産物でも形にする以上は意識の作用が無ければ完成しないのだから、そこには意図があり、メッセージがある。だがまだ始まったばかりの二人の絵を、まずは理屈を抜きにして楽しもうではないか。あすかとあづちが双児である事実は、それぞれの作品の側面を照らしあい、共に刺激しあっているのであろうから、会場内においてきっとこの作品達は共鳴するだろう。