ニュートロンアーティスト登録作家 三尾 あすか MIO ASUKA / 三尾 あづち MIO AZUCHI
あすかとあづちは岐阜県出身の双子の姉妹。二人は京都の別々の大学を出て、それぞれの絵を描き進めるうちに、次第にお互いの共通性と独自性を感じ合い、二人で発表することを始めたのでした。
あすかの絵は大きく広がる星空のようにキラキラと星が舞い、色が広がり、天の川のようにロマンチック。あづちの絵には不思議の国から出て来た様なキャラクター達が大活躍して、パンクでロックでスタイリッシュ。
そんな二人の絵は自然と響き合い、それぞれを引き立たせ、見るものを楽しませるのです。双子と一緒に、ユートピアへの旅へ出発しましょう!
gallery neutron 桑原暢子
中学の時、双子の友人がいた。彼女達はお互いが似ていること、比較されることが嬉しい反面苦しんでもいたのだろう。三尾あづち、三尾あすかも同じく双子である。直接彼女達に双子であるということの苦楽を聞いた事はない。ただ思春期にはそれなりの苦労もあったことだろうと思う。しかし彼女達は同じ道を歩み、今同じ空間で作品を発表しようとしている。以前にも二人展は開催したが、今回は二人での合作も登場することから二人展という枠を超え、同じテーマに沿って制作する「個展」のように感じてならない。
今回の二人展のテーマは「ユートピア」である。ユートピアとはイギリスの思想家であるトマス・モアの著作であり、その世界感は私たちが想像する桃源郷とは異なる様相を呈している。トマス・モア著『ユートピア』の世界では様々な規律が敷かれ、勤労・食事の時間・資源の共有など、全てにおいて人工的で規則正しい世界である。平和が保たれる代わりに、人間らしさや自由が削ぎ落とされた非常に機械的な世界でもある。その世界には「欲」そのものがないため暴動ももちろんないが人間としての喜びも見つける事は出来ないだろう。このように私達が想像する桃源郷とは、トマス・モアの作品のようにディストピアを想起させるようなユートピアによって現実社会を批判するというものではないかも知れない。しかし私達の中のユートピアもまた少なからず現実世界の不満や欲を映し出した世界であることには違いない。
そんな世界を個展のテーマとしてはいるが、彼女達は自分自身のユートピアを絵画という形に具現化しているわけではない。むしろ絵を描くという行為そのものが彼女たちにとってのユートピアそのものなのである。好きなものを描く、自由に筆を運ぶ、お気に入りの色を使う、何にも縛られず誰にもとがめられることなく思いのままに制作する。しかし「こうあって欲しい」という理想は常に変化し続け、一度願いが叶えばその上を願うものである。一度は気に入り描いたものが、次の日には嫌いになっている。嫌いなものは消してしまう。それも消してしまいたいという欲望。そしてその上にまた自分の好きなもの、色を重ねていく。その作業の繰り返しによる絵具の層には、彼女達の「こうであって欲しい」という欲や理想が詰め込まれているのだ。つまり私たちは彼女達のユートピアそのものを見るのではなく、彼女達が旅したユートピアからの贈り物を見るのである。