深遠で静謐な絵画世界。春霞のようなどこか湿った空気と、近くて遠い距離感を感 じさせる独特の雰囲気で、語りかける絵画。一つ一つ、窓を覗けば見えてくる彼方の 光景を目にする時、「貴方の所在は?」という問いかけが聴こえてくる様・・・。
「私的庭園」によせて
書置きもなしに部屋を出たものの
このような庭に迷い込んでしまうとは
この極めて個人的な庭に咲く
白い花の名は秘すべきものであり、
茂みの中に眠らせておくべきもの
過去の出展作品と新作を交えた個展(予定)
観る人の持つ記憶や感情を作品に重ねて
各々の心の内にある「私的庭園」を散策して頂ければと思います。
gallery neutron 代表 石橋圭吾
長谷川カツラコの絵には、本来なら霞がかった春先や、 じっとりと雨が降る梅雨の季節、 あるいは物思う晩秋が似合うと思うのですが、 今年の個展は爽やかなゴールデンウィークに行なうことになりました。 これは一重に、一人でも多くの方々にこの絵を見て欲しいという 作家と私の意向によるものです。 どうか皆さん、賑やかでアクティブな季節に、少しばかりお時間を頂いて、 この深遠で静謐な世界を味わって頂きたいと思います。
長谷川カツラコの絵には言葉が添えられていますが、 それは鑑賞者を束縛するものではありません。 むしろ、このような言葉をヒントに、この客観的で遠巻きに映る風景を 少しでも身近に感じていただけるように参考になればとの願いがあります。 また、それらを絵本のように捉え、ストーリーを想像するのも悪くありません。 描かれているのが名も知らぬ花や猫、そして見知らぬ風景だったとしても、 そこに漂う気配や印象はきっと、どこかで目にしたことのある 記憶の中の映像に近いはずです。 ファンタジーではなく、現実の、どこか不安でうつろな像。 絵は私達に語りかけ、問いかけて来ます。 あなたの所在は何処か、と。
この絵が窓から眺める景色だとしたら、 私達は何処に居て、何を見ているのでしょう。 霞んだ空気の中にぼんやりと見えるのは、 果たして本当のところ、この世界の何なのでしょうか。