今の世の中を描いて・貼って、重ねて透けて見せますフクダサトシ。 イラストレー ションとしての軽やかさと、その奥に潜む社会性。 チラリと覗いてみませんか?期待 の初個展。
gallery neutron 代表 石橋圭吾
一見、一枚のグラフィックのように見えて実は透明フィルムに描かれたものと その裏に隠されたコラージュ・イラストレーションの組合せ。
フクダサトシの表現の手法は単に作品上の問題だけでなく、 日頃の意識の中から自発してきたものと捉えることができます。
彼は初期の作品では、社会現象・問題を重く・暗く描いた時期もあると言います。
「ニュース」とは明るい話題より暗く陰惨なものの方が人々の心に訴えかけ、 影響を広く及ぼすものです。
いつの時代でもそのような出来事は存在し、表現者はそれを無視できません。
しかしながら、それを前提にどのような作品を生み出すかは、 個々の作家のポリシーとスタンスによって大きく変わります。
昨今の若者カルチャーを肯定するも否定するも自由ですが、 フクダは作品にポップな印象を与えつつ、裏にはグロテスクな面も覗かせます。 同世代に対する肯定・否定に偏るでなく、両面を示唆しつつも 作品としては独立した軽やかでシニカルな存在を描き出すのです。
風刺画(カートゥーン)にも通じるこのような表現は、 声高に反戦や厭世のスローガンを叫ぶよりも実は効果的で、 人間の文化的生活の上で重要な位置を占めるのではないかと思います。
笑うもよし、チクリと感じるもよし、どちらにしろ楽しむことから 現在の様々な問題意識が入り込んでくれば、成功でしょう。
コンセプチュアルな現代アートの潮流にあって、 彼のような軽妙なスタンスは非常にユニークであり、 今後の活動がとても気になるのです。