NYから京都へ・・・。時代のポートレート、美しいものへの眼差し。
エッジの効いた線描としてのドローイングと版画で見せる日本初個展。
その骨格から奥に透けて見えるのは、果たして・・・。
gallery neutron 代表 石橋圭吾
NYから京都へ・・・。
そう紹介すると、何だか非常に洗練されたモダンなイメージだが、 松村の作品は良い意味で素朴であり、何処の街かはあえて問わずとも 人物の描写において現代の空気を非常に上手く反映している。
版画及びドローイング的なイラストレーション、さらには水彩画まで手掛ける 多彩な作家ではあるのだが、今回は版画とドローイングに絞って見せる。
どちらもエッジの効いた線描を基に肉付けされているところが特徴であり、その骨格やフレームワークはグラフィックデザインのセンスも伺える。
さらには、版画作品において和紙を使ったシンコレによって 日本的な空気感と軽やかさを生み出し、ワビサビの効いた表現を成功させる。
彼がモチーフとして扱うのは主として人物である。
ポートレートとしての描写もあれば、グループでの躍動感も見せる。
ドローイングでも版画でも、その人物の姿勢と雰囲気が画面の主軸となり、背景は効果としてのものでしかない。
特に女性には相当のこだわり?を感じさせ、顔、仕種、佇まいに至るまで 彼の作品に登場する女性像は実に多様でありながら、ある種の芯の強さも感じさせる。
今回の個展のタイトルとなった『beLLe』はフランス語で「美人、美しいもの」を 意味し、いわば彼の理想的な女性観・美的感覚の象徴でもある。
何をもって「美人」とするかは人それぞれだとしても、 彼の作品から見えるのは単なるルックスの善し悪しを超えた 存在感、空気感のようなものであろう。
シンプルに、ユーモラスに映る人物の骨格たちは 視線を遮る余計な色づけを拒み、その存在の本質を見てくれと言わんばかりに 透明に訴えかけてくるのである。