【 作家、作品紹介 】
『The Voice of Color』 - blue -
碧天の空、紺青の海、瑠璃色の湖、どの青もこの上もなく清澄であるのに底知れぬ不 安を抱かせる。それは時空を超えた未知の世界に通じる存在だからではないのだろう か。その存在に触れる時、捉えがたい不可思議な魅力に意識が吸い込まれそうになる。
私は大学で日本画(実体の無い言葉で使いたくないのですが)を専攻して以来、この ジャンルで使われる素材(絵具=顔料、染料+膠)の美しさに魅了され続けてきまし た。中でも天然の群青、緑青、辰砂(天然の朱)、コチニール(貝殻虫の赤)、藤黄 (黄色の植物樹脂)等は素晴らしいものだと思います。そういった思いを強くしたこ こ数年、この素材を生かすためには再現芸術的な表現よりもシンプルな抽象表現の方 が適していると考えるようになりました。つまり表現と素材により密接な関係を持た せ制作するべきだと言うことです。画面に何が描かれているかという説明的なことよ りも、この最高の素材を通して人間の内面にある温もり、広がり、喜び、光、或いは 孤独、虚無、不安、闇と言った不可視なものを表現できればと思っています。
今回は『The Voice of Color』と題した第一弾として青をテーマに制作しました。単 に一枚の平面作品というのではなく、ギャラリー空間が未知の世界に通じるゲートに なればと思っています。