neutron Gallery - 足田メロウ展 『Planetica』-
2008/7/21 Mon - 8/3 Sun gallery neutron
ニュートロンアーティスト登録作家 足田メロウ MELLOW ASHIDA

約2年の充電期間を経て、いよいよ足田メロウが本格始動する。骨太の優しさと野犬の様な鋭さと天使のような極上の幸福感を描ける のは、まさに彼だけだろう。ファンにとっては待望の新作展でありつつ、今回は詩とのコラボレーションではなく、メロウの新しい作風とそこに開ける大きな夜 空のような世界は、プラネタリウムの様に輝かしいものになるだろう。2003年「歌いながら生きていく」以来の衝撃をお見逃し無く!!




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ニュートロン代表 石橋圭吾

 足田メロウは紛れも無く、京都を代表するイラストレーターであり、音楽・演劇・パフォーマンスからアートまでが自在に交差するオルタナティブ / アンダーグラウンドシーンに欠かせない重要人物である。ニュートロンにおいては2002年に詩人・豊原エスとのコンビで登場して以来(以後この二人による 発表や出版は数多い)、毎年のように新作を発表し、人気を博してきた。特に2003年の二人展「歌いながら生きていく」(青幻舎より同名詩画集の出版記念)はムーブメントとも呼べるほどの反響を巻き起こし、名実ともに人気作家へと上り詰めた瞬間でもあった。

  しかし緩やかに変化する彼の画風と共に、彼を取り巻く環境も次第に変わっていく。メロウをはじめ多くの京都オルタナティブ / アンダーグラウンドシーンの立役者達の活躍の場であった「カフェ・アンデパンダン」(御幸町 / 1928ビル地下)は2005年を境にメンバーが分散し、次第にシーンの中核から後退していく。一方でその分派が形成するクラブ「アバンギルド」(木屋町 / ニュー京都ビル3階)へと参加した彼だが、やがてそこからも距離を置くようになる。理由は諸々あるが、一つには彼の年齢はちょうど30を過ぎたあたりで、 画家としての収入を補うため、夜の仕事から足を洗う事を決意した事が大きい。そして今現在、彼は経済的に自立しただけでなく、もはやシーンの有無や誰かと のコラボレーションに頼る事無く、自立した一作家としての歩みをしっかりと踏み出そうとしているのである。それはまさに、作家としての一つのサイクルの終 焉とここから先の始まりを予感させるものでもあり、足田メロウという作家の真の可能性が発揮される瞬間とも言えよう。何にも属することなく、「孤高の人」 として在りながら老若男女を惹き付けてやまない表現世界。この個展は彼の久しぶりの本格的な発表でありながら、実に「歌いながら生きていく」以来の大きな インパクトを与える展覧会になるのではないかと、私は既に予感している。

  おそらく足田メロウのファンと一口で言っても、その好みは様々であろう。2002〜2003年頃の大ブレイク当時の、力強くシンプルな骨格が印象的なド ローイングが今でも鮮烈だが、その後2004〜2005年あたりは力が抜けたユーモアのテイストが目立つようになり、絵のサイズも小さく、優しい印象が目 立つ。その頃に結婚し子供をもうけたことも影響しているのか?と噂されたものだが、さらに続く2006〜2007年にかけて、彼はそれまでのイメージを完 全に払拭するかのごとく水彩を用い、優しさと愛に満たされた「妖精」のようなキャラクターを描く。同じ豊原エスとの共著でも、この時期に出版された「旅す る言葉」(青幻舎)というポストカードブックは、「歌いながら〜」と比較すると別人のようである。しかし描かれるモチーフは常に普遍性を備える。幼児の描 く様な「家」「鳥」「犬」「太陽」などは定番であり、彼の孤高のイメージを成り立たせる重要なもの達である。画風が変化してもそれらが登場する限り、私達 は足田メロウの絵だということをはっきりと認識することが出来る。さらに彼は音楽に合わせてのライブペイントはもちろん、映像表現と合わせたそれも得意と する。彼のシンパシーであるミュージシャンや映像アーティストと組んで見せる表現は秀逸であるので、ぜひ今後も機会を待ちたい。

  さていよいよ2008年度版、ニュー・足田メロウの登場である。タイトルの「Planetica」は詩人・カワグチタケシ氏の同名の詩に、今回の新作の 世界観がぴったりと当てはまったことからきている。以前の豊原エスとのコラボレーションのようにそれぞれの絵に対応する詩が存在するのではなく、あくまで 「Planetica」という一つの詩があるだけであり、作品世界全体を束縛するものでもない。今回は言葉の呪縛からも大きく解き放たれたメロウが見られ るはずだ。新作の画風は新鮮な驚きをもって迎えられるだろう。だが実は、その色調、筆の強さにはかつての野犬のような「牙」を垣間みることも出来る。ぐ るっと一周して高みへと昇っているのだろう。だからメロウファンはやめられない。