私が写真を撮っていたことを知る人はあまり多く無いと思われる。正直なところ、もう一作家として自分の事を最優先に考えることは無理だと思う。なぜなら、人の作品を鑑賞し、意見を言い、プロデュースし、楽しみ、一緒に企画する喜びは、たかだか自分の趣味の写真の喜びなどよりも遥かに大きいからである。よく、「もう写真を撮らないんですか?」とか「何か作ろうとは思わないんですか?」と聞かれるが、冗談じゃ無い、これだけ大きな作品「ニュートロン」を作っている私にとって、創造の欲求等毎日発散しまくっているのだから。ニュートロンのハード、ソフト、メディア向アピール、広告デザイン、その他諸々の「デザイン」及び「プロデュース」が創造でなくて何であろう?ではなぜ、今この時期に個展をするのか。答えはただひとつ、ニュートロンの節目にこそ、ニュートロンのメッセージを強く示すべきだからである。
写真展「0/1」
過去6年にわたって撮りだめた写真作品集大成として自費制作。当初からカラーリバーサルを用いてコントラストの強いグラフィックとしての汎用性を意識した作品を制作。
場所や時間等の情報性を極力排し、世界中どこで誰かが見ても同様の印象を受けることを意識した写真。
カメラという道具を用いて一瞬にして行ったドローイングであり映像である。
デジタル写真からさらに逸脱
2002年から完全にデジタルカメラしか使わなくなり、結果としてデジタルデータとしての写真画像を扱うことになる。0と1の情報の集積によるデジタルデータをグラフィックとして支配し、もはや写真とは「写っている」痕跡こそが事実であり、それをいかにして究極のメッセージにするかが「デザイン」としてのデジタル処理である。従って、アナログの時代とは手法もプロセスも異なるが、結果として一枚の「平面」を作り出そうとする試みに近づいて来ている。