【 作家、作品紹介 】
写真しかやりたくないと思っている大勢の内のひとり。
写真と一言でいっても表現できるジャンルは実に多彩で いざ始めるとなると大きな荒野にぽつんと立たされることになる。
何処に自分の旗を置くべきか。
そんなふうにして写真を撮り続けている。
ところがそれは案外身近なところにあった。
アトピーで、ひどいときには動くことさえ苦痛、 それに加え不眠症に悩まされ、実をいうと更に病を背負っている。
人並みにもなれない甲斐性無しが妻と子供まで授かり、 気持ちは焦るばかり。
体が、心が、ザワザワする感覚に見舞われた。
すると、写真の荒野に旗をたてるべき場所が自分を待っていてくれた。
探しあてたのではなく、そこに必然として。
「この躰のザワメキをそのまま写真に落とし込めば、いい」 夜を歩き、自分に近いザワメキを持った景色を、撮る。
景色に潜む気色を、撮る。
視覚に訴えかけてくる表層だけでなく、その奥の気配を共有すること。
それが自分がたてた旗。 案外、単純な構想だな、と思われる人もいるかもしれない。
しかし、この内側のザワメキと外側のザワメキの交わりは、 自分のバランスをとるのにとても重要な行為なのだ。