【 作家、作品紹介 】
作品を造り始めた頃からずっと気になっていたこと、それは、空気の中、物体の中を流れるもの、意識的な目に見えないものです。高校生の時、生物の教科書で見た、細胞と細胞の間にある浸透膜やそこを出入りする物体たち。なにかの形を借りて語れそうで語れないもの。言葉ではなかなか言い表せない、ずっと私の中にある感覚。今までそんなものが見たくて、様々なものの形や素材を使って作品を造ってきたように思います。
煙突、私の作品でよく使うモチーフです。煙突は、いろんなものが出入りする筒。外と内をつなぐもの。私の中では、多くの意味を含む大切なモチーフになっています。 二年ほどまえの夏のことでした。私は電車の中から、富士山の近くに広がる工場地帯のパルプ工場の煙突から出る煙りを見ました。煙りはモクモクとわきあがり次から次ぎへと膨らんでいきます。その姿に私はすっかり魅せられました。その美しさといったら。ずっと心から消えません。何か私が長い探していたものがみつかったような気がしました。
それ以来、雲や煙りのドローイングやマケットを造り始めました。そしてやっと最近作品として成りっ立てきたように思います。煙りの形を借りて、目に見えない移動する空気や動くもの。なかなか言葉では表せないずっと私の中にある感覚が少しでも形になって伝わればいいなと思います。
今回は、およそ五年ぶりの個展となります。生まれ育った京都での展覧会、やっと手探りで探してきたものが形になりつつあります。その集大成とも言える展覧会、たくさんの方に御高覧いただければ、こんなにうれしいことはありません。