【 作家、作品紹介 】
都市という生き物を描くこと
1983年の夏、私が学生時代の頃描いた1枚の作品が、現在の活動の原点に あります。それは意図的に描こうとされたものではなく、自分自身が抱く都市の 情景を自由に表現した、というのがふさわしいと思います。
一時期の制作の停滞はあったものの、初個展が開催された1996年以降、制 作活動は本格化し、今日に至っています。
“都市”というものに対する強い憧れは、10代の頃よりTVや映画を通して 見た影響が発端にありますが、また体験としての、人間の欲望を増殖させる装置 として、“都市”というものは私に限らず、現代人にとっての象徴でもあると思 います。
作品には、都市という生命体の中で無数に蠢く存在として人間を記号化し、画 面に浮遊させています。都市を形成するビルディングやイルミネーション、ハイ ウェイなど、一見無機質に見えるものが、多種多様な人間が蠢き全体が活性化す ることで、都市そのものが有機的な生き物のように感じられるのです。
怒り、悲しみ、喜び、楽しさ、都市が放つイメージは変幻し、我々を魅了し続 けています。これからも“都市”という増殖し続ける生き物を描き続けていきた いと思うのです。