ニュートロンでは過去2回の個展、数回のグループ展に出展、ぼんやりと優しい写 真が人気の戸倉。今年もまた、うららかな春に開催します。毎日のくらしの中で、ふ と見つけた幸せな気分。それらに名前が付かないとしたら、「その他」に含まれて、 やがて消えていくのでしょうか・・・。
gallery neutron 代表 石橋圭吾
誰にでも、目に入っているはずの景色がある。
ただそれに名前を付けたり、印をつけたりする行為やその意味を考えて、 特に必要を感じないものたちは、結局曖昧な出来事や風景として 獏とした記憶の隅っこの方に追いやられ、消えていくことになる。
そんな「もの」や「こと」達を改めて見ようとするのなら、その人は余程 過敏な神経の持ち主か、あるいは余程の物好きか・・・。
戸倉はどちらでも無い。
ただそれら、片隅の「もの」「こと」達にこそ愛着を感じ、 自分と言う存在と何かしらの関係を無意識に感じ、カメラを向ける。
「それ」を撮りたかったのではなく、「そんな感じ」が美しいと思った。
または、「そう」ありたいと思った。 のではないだろうか? 戸倉の撮った写真もまた、そうである。
何の気無しに通り過ぎようとすれば、そう出来る。
「これは何ですか?」とか「コンセプトは?」とか聞くことも出来る。
でも、それは写真を撮る人の勝手なポリシーであったり認識でしか無いため、 撮られた「もの」や「こと」には本来、そのありのままの存在があり、美がある。
理屈を前提にこしらえる美ではなく、本来の姿。
そこにそう在る、という価値。
戸倉の写真を通して感じて欲しいと思うのは、そういうことなのです。