【 作家、作品紹介 】
ほつれない糸
ほつれそうになる心
あやうい心があります
どんなことを選択した時も
芯はほつれない心でいたいと願った時、
この作品がはじまりました
まだ誰のものでもなく、永遠に誰のものにもならない
たったひとつのものを。
ある日、衣替えをしていてふと気づいた、からっぽの小袋。 防虫剤のナフタリンはいつも、いつの間にか消えてなくなっていました。 昇華という性質を持つこの素材で作品を作れたら、と思い立ってから、丁度5年が経ちます。
最初は、実際に変化していく素材そのものに興味があり、 衣服をモチーフとした実験的な作品から始まりました。 近作では、変化していく形を提示することで、うつろう過程を想像させ、 鑑賞者それぞれの背後にある「みえない時間」を誘う、そんな表現を心がけています。
時間の流れは大きく淡々と、たったひとつのようでも、そこには幾層にも織り重なった 個人的な時間が存在しているはずです。
目にみえることは在ること。 目にみえないことは無いことなのでしょうか。 記憶の時間を浮遊した時、手ではつかめない曖昧なみえない存在が、 確かにあるように思えてなりません。