neutron Gallery - 松尾和夏 『ヌノグラフィック・ショウ!!!』 展 - 
2004/7/26Mon - 8Sun 京都新京極 neutron 5F gallery

テキスタイルとグラフィックの新しい出会い。
イラストレーションや写真コラージュなどの平面表現と、「布」の立体性を合わせ持つ「ヌノグラフィー」を提唱する新鋭。
日常の様々なシーンにぴったりの新スタイルアートは今後の展開が期待大。
刷り込まれたイメージと布の存在感が見せるのは新しい風景・・・。
2週間に渡って開催する初個展。





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gallery neutron 代表 石橋圭吾

グラフィックデザインという言葉がほとんど意味を持たずうさん臭いように、 ここ最近のクリエーター達の制作の方向性は多岐に及ぶようになり、 今や「グラフィック」とは非常に曖昧で漠然とした表現になっている。 例えば「平面」とか「絵画」といった名称が時代と共に機能しづらくなると同じく、 「グラフィック」もまた単に責任逃れな呼び名になりつつある。 そもそもの本質で言えば、「グラフィック」はデジタルを前提とした 平面、映像、及び様々な媒体に展開可能な2次元の表現、と(簡単に)言えるが 3次元、4次元的「グラフィック」が無いとは言い切れない。 逆に言えばアナログもデジタルも共存する昨今で「グラフィック」と言うことは 果たして的を得ているのか、と思えなくも無いが、やはり便宜上使うことになる。 松尾和夏は、いわゆるイラストレーション、フォトコラージュなどを基本とし 手描きの線描にデジタルで色を付ける、といった作業も当然である。 ただしこのような仕事はさして珍しく無い。 問題は「ヌノグラフィック」と自称する、「ヌノ」である。

「ヌノ」は「布」であり、テキスタイルである。しかし「染色」や「織物」では無い。 平面の原画を基に近年の発達した技術で織物を織ることとも違う。 ここで扱われる「布」はあくまで紙やキャンバス、モニターと並列な位置にある。 つまりはフォーマットとしての使われ方であるが、性質は従来のそれらと趣きを違える。何より布は光を通し、揺れ動き、アートの支持体というよりは生活品としての印象が強い。 松尾はここで「nuno-graphy」という新しい手法を提唱する。 布の持つ厚み(立体感)はもちろん、グラフィックにオブジェ的見方を与えようとする試みとして、あるいはファッションデザインとグラフィックデザインの交差する地点として。 「布のある眺めをいじる行為」とは本人の弁である。。 写真でもイラストでも、布に刷られた状態では本来の光沢を失い、 視覚的にくぐもった表情は等しく反映される。 直接的に布に絵を描くのでは無く、シルクスクリーンでもなく、転写でもない。 印刷の工程に近いプロセスを経て現れるイメージは布と一体化し、 あたかも衣服やカーテンのそれのように、物として、印象として存在する。 御存知の通り、布は物としてあらゆる展開が可能である。 松尾の提案する「ヌノグラフィック」は、日常に歩み寄るアートの一端として あるいは案外、視覚表現の進むべき方向性として、注目に値するだろう。