neutron Gallery - 遠山貴也 展 『 LOVE & シュール 』 - 
2004/12/20Mom - 29Sun 京都新京極 neutron 5F gallery


CGではなく「パソコン画」。どこまでもお茶目に、ポップに描かれるファンタジッ クな世界は現実との対極にありながら、実はしっかりと繋がっている。ローテクの裏 に確固たる計算。





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gallery neutron 代表 石橋圭吾

彼のような作家を真面目に文章で表そうとするのは、 果たしてどれくらい意味の有ることなのか疑わしいと思いつつも 逆にここである程度の事を書いておかないと、 遠山貴也に対する偏見が強く残るのもどうかと思うのでここに紹介する。

彼はもともとアクリル絵具やペンキ、水彩などを用いての力強い「ペイント」が 本来の制作スタイルである。 しかしここに見せるのはおよそそれとはかけ離れた、全くローテクなCGである。 いや、彼曰くそれはCGではなく「パソコン画」と呼ぶ。 なぜならCGとはコンピューターの技術が発展する限り絶えまない研究と 時代の最先端を行くべきグラフィック性を兼ね備えたものだとすれば、 彼のやっていることは単に誰もが使うソフトをマウスでコネコネと操作しながら 不自由なまでに制限された(自らそうしている)技法により、成り立っている。 もちろん絵筆を使えばもっと上手に描けることは言うまでも無いが、 彼はそういった手法の制限、あるいは枠組み、質感を好むからこそ あえてその範囲で絵を描こうとし、無益な(といっては失礼だが)行為を続ける。 しかしそこに存在するのは意外にも計算された側面と、 なぜか人を惹き付けてしまうユーモアであり、優しさである。 計算とは、ガタガタの線のよって成り立つ構図、微妙な「ハズシ」具合であり、 これは一歩間違えるとバランスを崩して作品性を無くしてしまう。 また、色の用い方についても、単に色を多用している様に見えて 実は効果的に、フラットなのに印象的な画面を引き出している。 これらをどの程度計算しているかは私の知る所ではないが、 彼はこの制作スタイルに大きな喜びを見い出しているのは間違い無い。

「ローテク・ハイセンス」がもてはやされた時代は過ぎ、その本質的な空虚さも 私達は既に知っている。 だがしかし遠山のこれらの絵は、そういったキャッチコピーを必要としないばかりか、 彼の制作全般の中でも、まして世の中の表現の中でも異彩を放ち、 私達に一時のバカバカしい笑いと妙な清清しさ、そしてその後に なぜだか心暖まる余韻を残してくれるのである。