neutron Gallery - 「エホンノミライ」presents 『いちかわともこ展』 - 
2005/1/17Mon - 23Sun 京都新京極 neutron 5F gallery

大きくて柔和な笑顔に包まれて、全ての人々に幸せが訪れますように・・・ 今年もまた、冬の時期に個展を開催するいちかわともこ。 宗教画のようでいて、親しみやすいファンタジーとも感じられる絵画世界はこの殺伐とした世の中に暖かな光を当ててくれる。 ファンならずとも、ぜひご覧下さい。





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gallery neutron 代表 石橋圭吾

 また1年が廻り、新たな年がやってくる。 少しづつ歳を重ねるにつれて1年のスピードは加速度的に早く感じ、 逆にその重みをしっかりと確かめることすら出来ないままに、日々は過ぎる。 しかしそれにしてもここ数年の世の中を見れば、何と不幸な出来事が多いことだろう。 「世の中」とはミクロ的に見てもマクロ的に見ても当てはまる。 身の回りを見渡してもあまり景気の良い話は聞かれないばかりか、 隣近所でさえ薄ら寒い関係の中、毎日ひったくりや詐欺、強盗、痴漢、殺しがどこかで起り イラクどころか日本すら「安全」な場所等何処にもない。 世界のグローバル化は一方で犯罪も等しく流布させ、地球はどこもイライラし、危ない。 今そうでないと感じる所でも、いずれはそうなる。それくらい、病んでいる。
  そんな中、私達が救いを感じ、信じられるものは何だろう。 ギャラリーをやっているからではなく、それを信じたいからやっている。 それとは即ち、美術をはじめとする表現行為であり、 創造(クリエーション)と想像(イマジネーション)である。 人間は弱い。生まれながらにして独りで立てないのだから、何かにすがるしかない。 それが宗教、政治、学問、スポーツ、あるいは芸術だったとしても、違いはない。 何かに打ち込める人、何かを信じられる人は幸せである、 私は少なくとも、世界というさして広くもない地域の中で様々な人種が理解しあい、 共存しあうために必要なものとして、先の創造と想像を挙げる。それを信じている。
 いちかわともこはこの季節に個展を開催するのはこれで3回目となる。 絵本「民族アパート」「おおきなサンタ」はいまだに人気で、その作品性の評価も高い。 一見して感じられる様に彼女の絵画には宗教性が強く出ているのだが、 例えばキリスト教のそれと違って、描かれる信仰の対象は全て柔和な笑顔を浮かべ、 大きな体をいっぱいに広げて、私達を暖かく包もうとしている。 サンタクロースも神様も、全くをもって彼女の世界では同列に位置し、 子供だけでなく全ての人間や動物を守る存在であり、規律であり、絶対的な存在でもある。 私達はこれらの絵を見て単なるファンタジーを夢見て感動するだけでは無いのだ。 今この現実の世界に無く、皆が心から必要とするものが、ここには描かれている。 いちかわともこは自分でもそれを必要としながら、コツコツとマイペースに、 毎年毎年、描き続けている。 少しづつでも、世の中に幸せの笑顔を思い出させるために。