neutron Gallery - 松井 沙都子展 『 a ghost 』-
2009/6/9 Tue - 14 Sun gallery neutron kyoto
※通常より短い一週間の会期となります。 


profile
松井沙都子 MATSUI SATOKO

【略歴】
1981 大阪府出身
2004 京都市立芸術大学美術学部美術科油画専攻卒業
2006 京都市立芸術大学大学院美術研究科絵画専攻油画修了

【主な個展】
2002 個展 / 京都市立芸術大学 小ギャラリー(京都)
2007 『THOM』 / gallery wks.(大阪)
2008 ドローイング展 / 石田大成社ICB(京都)
1988 『クロージング』 / gallery Den 58(大阪)

【主なグループ展】
2002 『real vision/real space』 / 京都市立芸術大学(京都)
2003 『quattoro.4』 / 京都市立芸術大学 芸大ギャラリー(京都)
1988 『…について』 / YEBISU ART LABO(名古屋)
2004 『主と客』 / 同時代ギャラリー(京都)
2007 『太秦仕事』 / 制作スペースでのグループ展(京都)
2008 『トゥールビヨン』 / O gallery eyes(大阪)
1988 『太秦出張仕事』 / アートスペース虹(京都)


【その他の活動】
2006年10月〜 太秦にある共同制作スペースで、メンバーとともに自主ゼミ兼お茶会である
1988 1988 19『ウズカフェ』を、不定期に開催。
2008年4月 ウズカフェ 一日限りの展覧会
2009年2月 ウズカフェ (『4つのアトリエ』展に参加、カフェ運営、展覧会)

【レビュー】
ギャラリーレビュー 文章:小吹隆文 (『美術手帖』2007年6月号)



statement

「現代社会という世界と、自身の身体の関係」について考え、個人的な動機に基づき制作しています。
一貫して、「自身の身体感覚」が、基礎になっています。
メディアの情報に溢れた、すべてが数値化可能であるかのような感覚を覚えさせられる、管理的な日常生活の環境に生きています。
これらの量的に大きな情報に翻弄されつつも、快楽を得られるのであれば楽なのですが、現実の肉体は情報の中に同化することはできないものだと思っています。
たとえば、ファッション雑誌のモデルのように、いつもきれいで陽気な人たちはおらず、雑貨や家具を扱う多くのブランドのように、清潔で「ナチュラル」な生活は、どこにもありません。
メディアの中に、過剰に美しくに誇張された自身の身体の理想の姿をもとめているのに、現実は醜い身体を持つ動物です。
自身の理想論の中で醜い身体を抑圧してしまえば、その結果でいずれ身体は悲鳴をあげるものです。


作品は、未完成で不安定な状態の、身体的なものとして作りたいと考えています。
部分的に切り出された身体のパーツ、又は身体的な要素をコラージュし、絵画や立体、インスタレーションなどを制作しています。


非常に個人的な理由で、制作に関する「図と地」および「身体と空間」の関係を、「私と私の家 / 部屋」に例え、作品の基準にしています。
「私」 / 「住宅建築」という関係の間で、主体であるはずの「私」の方が弱いものであり、「私」<「住宅建築」の関係にあるように感じています。
このことをもとに、現在は、イメージより下地に強度がある平面作品を中心に制作を進めています。
「身体=図」が後退していった結果、肉感を伴わないのに身体の輪郭を残している、「身体性を欠いた身体」になります。
肉感を伴わない身体は、活き活きとしたポジティブな肉体に対して、「ネガティブで空虚」であると思います。
この空虚さは医学書などにある身体の図解に似ていて、流血をともなうショッキングな事実を遠ざけることで、身体性をともなわないまま身体を表すように、自身の「身体性を欠いた身体」を、作品において表現したいと考えています。


空虚な器としての身体を、欠落感や不安感を与える存在として見せ、見る人に不安定な感覚を呼び起こす導線としての作品を作るため、常に実験し続けているのが私の制作だと思います。



2009年4月