neutron Gallery - 岸本兄妹 展 『ウアカリ』 - 
2004/3/22Mon - 28Sun 京都新京極 neutron 5F gallery

岸本兄妹(キシモトソウタ、岸本まどか)
兄ソウタと、妹まどかによる正真正銘、兄妹ユニットが再登場。ソウタのフラッ トでクールなデジタル写真の上で自由に動き回るまどかのイラストレーション。仲の 良い兄妹が提案する「眼に美味しいアート」を、御堪能あれ!





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gallery neutron 代表 石橋圭吾

 実の兄弟によるユニットと言えば「カオリとマリ子」(姉妹)が思い出されるが、岸本兄妹の場合は読んで字のごとく、兄と妹の組み合わせである。しかもこの二人は全く別の要素を持ち合わせ、それぞれデジタルカメラによるグラフィック表現と、片やイラストレーションを描いていたのであるが、それを私がふとした思い付きで二人で作品を制作することを提案し、今日に至る。
  しかしそれは単なる思いつきに留まることなく、ある意味で私の狙いは成功し、いかにも現代的なグラフィックアートが誕生した。

  ソウタ(兄)のデジタル写真はクールでフラットな質感によって視覚的カットアップをくり返し、編集(ただし色彩に関しては忠実を保つ)、プリントに至るまでデジタルで行うことによってアナログ写真とは全く違う「デジタル写真」を再現するが、なぜかそこに映るものを見て私たちはリアリティーを感じずにはいられない。全くをもって被写体やメッセージといった文脈を放棄したそれらの写真はそれだけでグラフィックとしての格好よさは充分放つことはできても、やはり表現としての奥行き、手触りに欠けてしまう。そしてそれを補うべく?登場するのが妹のまどかのイラストである。
  フラットで均質な画面に登場するのは得体の知れない動物のような、奇妙な生き物達。それらは皆「顔」と「表情」と「動き」を伴い、瞬間的に止まっているソウタの画面にストーリーと彩りを添える。いや、イラストが単なる添え物というのでは無く、例えば写真とイラストを対比させて並列させるような作品群においては、全く異なるモチーフ(花と女性の顔)をそれぞれ見せても、不思議とそれらが「佇まい」や「芯」の部分で相似し、言葉にできない感覚を呼び起こす。もちろん、一画面に競合する作品ではさすが兄妹、という息の合ったコンビネーションを見せる。無駄が無く、やり過ぎず、「間」を大切にしながら、彼らの言う通り「美味しい」絵を見せてくれる。口当たりのよい甘さと軽さをもったこの作品の後味は、意外にも深い。