【 作品紹介1 】
「ひとつの、そして3つの山」
2007.1
図鑑とは写真や図を系統的に配列し、解説を加えた書物であり、私はこの実体を代替した視覚的な行為において、まず自らの作品が図鑑的な言語をもつことを指示する。
私は山をみるとおいう行為において、おそらく一本の木を前にしたとしても、木のそのままをみることはできない。言葉によってこれは木であると認識し、木そのものではなく、そこに付随するイメージをそのものとしてみるのであろう。ものをみる行為とはそうであったとしても、私は実体の前に立ち、再び木が木であることを明らかにした上で、新たな視覚をもって山をみる。私にとって一本の木をみることとは、眼前にある対象化された実体をみることではなく、その背景との相対的な空間を捉えることにある。そして、一本の木と私という直接的な経験において、そのものをみるのではなく、私と実体をつなぐ間接的な経験(記録された写真や標本)と眼前の実体との視差において、そのあいだにあるもの、もしくはその関係性を仮設し、そのものをみるのである。
私は二つのことを始める。一つは山へ登ることで、実体を採集し、標本とすること、もう一つは実体と呼応するものを植物図鑑のなかに、発見することにある。私はこの二つの行為の狭間に山そのものを見ることができるのではないか。つまり、山をみるという行為は図鑑をもって山を登ることによって成立し、それを視覚化した新たな図鑑へ容れることを作品とする。