衣川 泰典 KINUKAWA Yasunori
【略歴】
1978 京都市に生まれる
2002 京都精華大学芸術学部造形学科版画分野卒業
2004 京都精華大学大学院芸術研究科造形専攻版画分野修了
【個展】
2002 「a floating sight」(PRINZ /京都)
2003 「Nomart Projects #02_09 衣川泰典展 transparparent space」(Nomart Editions Inc/Project Space CUBE /大阪)
2004 「間にうかびあがるもの」(MARONIE /京都)
2006 「ヨゾラノニジ」(gallery neutron /京都)
【主なグループ展など】
2001 「PRINT Exhibition 2001」(同時代ギャラリー/京都)
2002 「本物らしい非現実」(ギャラリー千/大阪)
「Mixture」( 海岸通り(ギャラリ-CASO /大阪)
「NEWTRAL PACK - 次代の版画 -」( 名古屋芸術大学アート&デザインセンター ギャラリーBE&be /愛知)
2003 「WORK IN PROGRESS 2003」(GALLERY ARTISLONG /京都)
「ART CAMP IN CASO」(海岸通りギャラリーCASO /大阪)
2004 「京都府美術工芸新鋭選抜展」(京都文化博物館/京都)
「WORK IN PROGRESS 2004」(GALLERY ARTISLONG /京都)
「Jahesgaben」(Nomart Ediitions Inc/Project Space CUBE&LOFT /大阪)
2005 「錦市場でフィレンツ・トスカーナェを捜そう Vol.2」(錦市場商店街/京都)
「市場」(mori yu gallery /京都)
「gallerism 2005 屋台的アート」(大阪府立現代美術センター/大阪)
2006 「京都府美術工芸新鋭選抜展」(京都文化博物館/京都)
「for myself 〜自分用〜」(gallery neutron /京都)
2007 「二・五次元 - 絵画考 -」(MARONIE /京都、 wakoal ginza art space /東京)
「裏・アートマップ」(京都芸術センター/京都)
「ふれてみる/なでてみる」(GALLERY RAKU /京都)
「かけらな夏」(gallery neutron /京都)
「After Math program No.4 Shangri - La Chandelier」(The Artcomplex Center of Tokyo /東京)
「エンディイングデモ」(The Artcomplex Center of Tokyo /東京)
2008 「現代作家立体小品展」(MARONIE /京都、wakoal ginza art space /東京)
【ワ-クショップ】
2007 影にふれてみる(GALLERY RAKU /京都)
【受賞】
2001 あおもり版画トリエンナーレ 青森放送賞
2002 全国大学版画展 買上賞
【パブリックコレクション】
青森市民美術展示館
町田市立国際版画美術館
京都精華大学
『ふれて/みる』
スクラップブックのような絵を描こうと漠然と思っています。僕にとってのスクラップブックというのは、決して僕個人の趣味のコレクションでなくていい。スクラップブックには新聞・雑誌・切手と様々な印刷物を収集し、真っ白なノートに貼り込み、個人の視点をコレクションする行為です。インターネットの辞書によるとスクラップブック【scrapbook】新聞・雑誌などの切り抜きをはりつけておく帳面。切り抜き帳。[ 大辞泉 提供:JapanKnowledge ] とあります。 学生時代に海外の旅行先の骨董屋で購入したいつ、どこで誰がつくったか分からない古いスクラップブックを今でも大切に持っています。そこに貼付けられた印刷物のイメージは様々な新聞や雑誌から人物、動物、乗り物、風景といったものなどが切り抜かれていました。この1冊をみた後、時代と国境を軽く飛び越え、異国への憧れとロードムービーのような映画を見たあとのような感動を持ちました。また、それらの印刷物を眺めることで物思いに耽りつつ、「みる」ことのおもしろさを考えさせられました。「みる」ことへの問いかけは芸術にまつわる世界での普遍的なテーマのひとつです。スクラップブックとは、当然、好奇心の対象のものを収集し、時代の記録の一部として残すものです。単純に異文化にふれたことに好奇心が刺激されたのかもしれないし、他人の視点にふれることが出来て面白がっているのかもしれません。未知の世界にふれるきっかけとして、この匿名のノートブックに強く惹かれました。新聞・雑誌などの切り抜きの1片だけでは気付くことの出来ないことが、何ページも集積することで人の好奇心を刺激し「みる」ことについて考える事が出来るようです。 『みえないのにふれてみる』というシリーズでは様々なチラシ、ポスター、雑誌や個人の写真を貼り込み、描かれています。一枚の絵画でもありますが、絵画ではないのかもしれません。スクラップブックのようなものなのです。イメージの羅列のようにみえる集合体は捉えようのない今を記録することでもあり、個人の憧れを形にする方法なのかもしれません。 印刷物を起点に作品制作に用いるのには、僕自身の収集癖の延長とオリジナリティの懐疑と社会との接点から用いる理由があります。情報が氾濫する現代とありとあらゆる物・事を管理している現代。自由を謳いながら、窮屈な時代の中での自分らしくあるための表現なのかもしれません。日常に刺激的なイメージが氾濫する一方、物事の善悪や根本を思考することを停止している日常で今を生きる私達は「みる」ことの根本的な喜びが麻痺しているようにも思えます。大量の印刷物のイメージや記憶の断片を切り抜き・貼り・描き込み、仮想のビジュアルイメージのような実際にはふれられないものにハサミや絵の具でふれてみることで過去・現在・未来の私達を取り巻く事柄について考えて、『みえないものにふれてみる』というシリーズ作品をつくっています。 描き込まれた視点の断片からどのような印象が残るかは人それぞれだと思いますが、ロマンチックな情景を思い浮かべてもいいし、今の日常について考え、今を生きている私達について考えるきっかけになればと思います。
2008 年 2 月 衣川泰典