neutron Gallery - 鶴田 一郎展 『雪月花と女神回廊』-
2008/11/11 Tue - 23 Sun gallery neutron & 文椿ビルヂング・ギャラリー


profile
鶴田 一郎  TSURUTA Ichiro


1954年、熊本県本渡市に生まれた鶴田一郎は、天草地方の豊かな自然に囲まれて育った。幼少の頃から絵を描くのが好きだった彼は、高校を卒業後、多摩美術大学グラフィックデザイン科へ進み、イラストレーターを目指す。時代の波に乗り西洋文化に影響を受け、写実的な作品を描いていく中で、自分が「日本人である」という意識が芽生え次第に淋派、弥勒菩薩をはじめとする仏教美術等、日本独自の美意識へと傾倒していった。彼の描き出す美人画は、まさにアールデコのヨーロッパ的要素と自分の中の日本的なものが見事に融合し、たおやかで華やかな世界を創りあげている。1987 年にはノエビア化粧品の広告に抜擢され、CM アートの先駆者として人気を博し、彼の作品の中の女性たちは多くの人々を魅了し続けている。


【略歴】
熊本県天草市 (旧本渡市)に生まれる
1972 熊本県立天草高等学校卒業
1976 多摩美術大学グラフィックデザイン科卒業

【80 年代】
1980 この頃から現在に繋がるスタイルの美人画を描き始め、画廊を中心に活動を開始する
1984 アメリカで美人画6 点がアートポスターになる
1986 東京にて個展
1987 ノエビア化粧品の広告に使用される(以後1998年まで継続)
1989 画集「テンプテーション」出版
     以後版画展は全国各地で毎年実施
     ロサンゼルスアートエキスポ出展

【90 年代】
1990 リトグラフ発表(以後毎年発表)
     ニューヨークアートエキスポ出展
1991 シルクスクリーン発表(以後毎年発表)
     東芝「ジャズを聞きたくて」シリーズのCDジャケットに使用される
1992 アートポスター発表(以後数々発表)
1993 画集「ICHIRO TSURUTA WORKS」出版
1995 大津にて原画展 / 大津歴史資料館(滋賀)
1996 ハクビ総合学園の広告に使用される
     テーブルウェアのデザインを手掛ける
1997 版画作品集「鶴田一郎の世界」出版
1998 メガネフレームのデザインを手掛ける
1999 TBS ドラマ「週末婚」のタイトルバックに使用される

【2000 年以降】
2000 版画作品集「鶴田一郎の世界Vol.2」出版
     レフグラフ「GENJI」シリーズを発表
     国際福祉機器展のイメージポスターに使用される
     エッチング「Story of Cosmos」シリーズ発表
     CD-ROM「鶴田一郎作品集・現代美人画の世界」発表 シリーズ発表
2001 パリにて個展
2002 本渡(現天草市民)センターにて原画展 「天草四郎」発表
     上記制作の模様がドキュメンタリー番組(テレビ朝日 テレメンタリー)として放映される
     東京 日本橋三越にて展示会(以後2006年まで毎年開催される)
2003 福岡にて原画展(アクロス福岡)
2005 ニューヨークアートエキスポ出展
2006 ニューヨークアートエキスポ出展
     上海アートフェア出展
     熊本・鶴屋百貨店にて原画展
     天草アイランドマジックにてジャズとのコラボレーションで琳派を描く
2007 ニューヨークアートエキスポ出展
     Miart(ミラノ)出展
     久留米工業大学客員教授就任
     福岡・三越にて画業30年展開催



statement
「鶴田一郎作品展in gallery neutron にあたり」

早いもので現在のようなスタイルの美人画を描き始めて四半世紀が過ぎようとしています。果たして何人の女性像を今までに描いてきたのか、女性の美しさをテーマに描いてきてつくづくよかったと思うのは何十点何百点と描き続けてもまだまだ描き尽くせない美しさが女性というテーマには秘そんでいるということではないでしょうか。いまだに創作の意欲も尽きません。

今回の個展では私の美人画の原点にもなっている琳派を私なりのスタイルで描いてみました。多くの日本の美術からも影響を受けてはいるのですが、中でも琳派のデザイン性、装飾性、自由さにはより深い影響を受けています。もともと、琳派と呼ばれる絵師達には師弟、徒弟制度というものはなく、先人達へのリスペクトにより、引き継がれてきた様式だと言われています。ですからちょっと大袈裟ではありますが今、私が琳派の後継者を名乗っても
許されるのではないかとさえ思っています。まだまだ実験的な作品ではありますが、今回の琳派の作品には女性は登場しません。しかし、私の創作スタイルの原点回帰であり、新しい挑戦でもあります。又、京都という場所でありニュートロンというスペースでの個展でもありますので、伝統と革新、そして現代美術にも通じる作品になっていると思います。
より多くの方々にご観覧頂ければ幸いです。


「美人画について」

私は、私にとってのミューズを描きたいと思っている。そしてできれば、そのゆらぎの中の迷宮で私に力を与えてくれる存在もミューズであって欲しいと願っている。たとえ私の描く女性像が、私の心の中の脆弱(ぜいじゃく)なセンチメンタリズムや、青白い煩悩の炎から生まれたものであったとしても、ミューズの祝福を与えられれば、純粋へと昇華(しょうか)し、再び永遠なる真実の女性として生まれ変わる事ができるのだから。そして、唯一私に残された真実があるとするならば、描くという祈りにも似た行為の中で、描こうとする女性像を通して遥か彼方にいるはずのミューズからの慈悲の微笑を、一瞬間でも受けられるのではないかという幻想を信じること、それだけかもしれない。

鶴田一郎