作品紹介1
「しょくせん(触線)」 syokusen(line of touch) 2008年
200×70cm 石膏地パネルに油彩
30×30cm エボキシ樹脂点字ブロック
「しょくせん」は「視線のような触覚」あるいは「触覚のような視線」の意を込めた造語です。英題では「line of sig」h tをもじって「line of touch」としました。
点字ブロック(視覚障害者誘導ブロック)を、色と物質の2つに分けて認識してみようと思い、そのために絵画として描かれた点字ブロック自体を透明にしたも のを作って対にして配置しました。これらが目の見える人、見えない人にとって、それぞれどういったものかを考えてみたいと思います。
絵画から私たちは点字ブロックが描かれていると容易に認識することができます。そして、どういった目的の物かも理解します。これは普段から目が見えること で触れる前に意味を受け取っていることの顕れです。それに対し透明となった点字ブロックは普段と比較すると認識し難くなっているため、足に触れて気づいた 時の感覚とは盲目に近いものではないでしょうか。
一方、盲目の人にとって透明な点字ブロックは本来の意味と変わりませんが、展示空間に突然存在することで、普段と違った誘導を与えてしまうものとなるでしょう。誘導の方向は、観客が絵画と向き合う形に指示されるのです。
しかし、彼らは絵画として描かれた点字ブロックを、マチエールを持った平面とだけ認識するかもしれません。その意味では制作の中、私が絵具を指で延ばし支 持体に触れることから、盲目の人の触覚に還元される情報の量は微々たるものに過ぎず特異なものでもありません。けれど、それが何かに置き換わることを望み ながら制作は続けられます。
これは「自分とは別の認識の方法について考え想像すること」を目的とした作品です。つまるところ盲目の人のために作られた作品ではなく一方的でもあります が、少しでも見えることを前提とする視覚芸術の内と外を繋いでいきたいと思います。
「1/ 5 消失の試論」 2007年
2×1×1m 発泡スチロール立体 上質紙の上にペンキで塗布
前作「森の迷い方」の円柱の代わりに中心に立体を置くのであれば特徴の塊であるキャラクターの一部が消失しているように溶け込んでいるというのはどうだろうか?と考えた。
陰影に色を加えて立体を背景に溶け込ませる試みで搬入時間の関係により現地での公開制作をするという形となったことで鑑賞者との対話が持たれた。
「森の迷い方−左回り−」 2007年
直径1m 高さ2mの円柱 上質紙の上にペンキで塗布
仮設の空間の中心にある円柱の回り込む部分とその奥の壁面の色を揃えることで境界を溶け込ませようとした作品です。
左回りに足を進めることで色の間から次の色が見えてくるコンセプトは森で歩を進める度に風景が奥から広がる様子から着想されました。